冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「俺昨日からつまらないことでピリピリしてたんだけど、花のことを見つけたら引き寄せられて気が付いたらここにいたんだ」


「え、えとえと」


内容もだけど彼が私を見つめる眼差しがいつもよりも甘くて、口をポカンと開けてぼんやりしてしまう。


そんな私にお構いなしに彼はさらに甘さを増していく。
 

「そしたら花が友達と俺についての話題で盛り上がってたから。つい話に聞き入ってた。
花が俺のことを真っすぐに好きでいてくれてるのがわかって嬉しかった」


今日の彼はなんだかいつよりも饒舌で。


一体どうしちゃったんだろう。


そんなことを言われたら身体中の血液が沸騰したようにポカポカ熱くなってくる。


「千景くん?」


彼の熱を帯びた眼差しに今にも溶かされそう。


もしや千景くんは私のことをキュン死させようとしている?


だけど、彼は言葉だけではなくてその上驚くような行動も。


彼は一歩近づき片腕をそっと私の背中にまわした。気がつけば彼の腕の中へすっぽりと包みこまれていた。


思わずコクッと息を呑む。


すると耳元で優しくささやかれた。


「俺、花のことを……したい」


少しかすれたその声が色っぽくてドキドキする。
< 206 / 351 >

この作品をシェア

pagetop