冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
千景くんのたくましい胸の筋肉にうっとりしかけたけど。


その感触を味わってる暇はなかった。


彼は私からスッと離れていく。


抱き寄せられたのはものの5秒くらいのことだった。


グラウンドで授業中に抱き合っちゃったよ、なんて大胆なの千景くんたら。


でも、そんな情熱的な一面も好き。


そのまま彼は満足そうにニッと笑ってじゃあなと言った。


そのまま踵を返し、クラスメイト達の方へ走って行ってしまった。


なになに、あの余裕たっぷりの極上スマイルは。


そのあまりの鮮やかな仕打ちにしばし茫然自失。


だけど、私の耳元でささやいた彼の声は、いつまでも鼓膜から離れなかった。


『俺、花のことをもっと大切にしたい』


彼は確かにそう言った。


それってどういう意味なんだろう。
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