冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
張り切っている彼の気持ちに水を刺さないように、優しく微笑み返した。


「うんっ」


拓海くんの表情は明るくはつらつとしている。


体育祭の準備は大変だけど彼なりにやり甲斐を感じてきたのかも。


私もますます頑張らなきゃって思った。


「でもさ、花、最近雨城くんに会ってないみたいじゃん。そっちは大丈夫なの?」


「え、うん。大丈夫だと思うけど」


ちえりちゃんの質問に曖昧に答えた。


「そうかな、案外彼焦ってたりして。今まで押してばかりだった花が急に引いてきたんだから。まあ作戦としてはなかなかいいと思うけどね」


ちえりちゃんにいたずらっぽい瞳で見つめられて、そんなことを言われてびっくり。


でも、そんな恋の駆け引きみたいな理由で彼と会ってないわけじゃないんだけどな。


「私だってほんとは会いたいんだけどね。でも今は浮かれてる場合じゃないから」
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