冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「ブフッ、千景、顔が青いぞ。大丈夫か?」


伊達がそんな俺に気が付いて肩を震わせながら尋ねてきた。


「ああ、大丈夫」


大丈夫な、わけないだろ。


だけど、彼女があんなに頑張っているんだから邪魔するわけにもいかない。


彼女は説明に熱が入ってきたのか赤い顔で男子生徒達に話し続けている。


「普通学科とセレブ学科が、今よりもっと仲良く交流できたらいいなって思うんです。
同じ高校に通っているんだし、その方がきっと自然なことだし楽しいと思います」


懸命に夢中で話すその顔がますます可愛い。


だけど、俺たちには全然気が付かないみたいだ。


仕方がない、素知らぬ風で正門を通り過ぎようと思った。


のこのこ出て行って彼女の仕事を中断させたくない。


ほんとは頑張れよって一言でも声をかけてあげたいけど、そこをグッと我慢した。
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