冷たい千景くんは１０分だけ私の言いなり。

「おーい、花ちゃん。頑張ってね。千景と一緒に応援してるから」


突然、伊達のアホが彼女に向かって軽い調子で声をかけたのでギョッとした。


ゲ、なんだよ。おまえがそんなにサラッと言うなよな。


少し離れてはいたけど、彼女はそれでようやく俺たちに気が付いた。


「あ、伊達さん、千景くん」


フワッと笑ったかと思うとこっちへ手を振る彼女。


「花……」


だけど、すぐにわかった。もともと華奢な彼女がすこしやつれているようなそんな気がした。


頑張ってるんだな、花。


髪を無造作に後ろで束ねていて、よく見たら疲れた顔をしているし。


俺と会うときには薄く化粧をしているけど、よく見ると今の彼女はほとんどスッピンみたいだ。


「千景くん……」


彼女はいつものようにぼんやりと見惚れるような眼差しを俺に向ける。


それを見た俺は小さく頷いてからこんなことを叫んでいた。