冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
誰が知らない奴といきなり握手なんてするかよと思って、無視しようとしたら伊達が急に俺の手を握ってきたのでギョッとする。


「いいよ、いいよ、並んで並んで」


伊達はニコニコしながら女子達と俺を無理やり握手させようとその場を仕切り始めた。


「……」


こうなったら断るといろいろ面倒くさいのでされるがまま握手した。だけど、仏頂面になってしまう。


「キャッ、雨城先輩の手大きい、指も綺麗」


下級生の女子たちにテンション高くはしゃがれるけど、こういうのはほんとに苦手だ。


「次の種目も頑張ってください」


「どうも」


はあっ。思わず、ため息がこぼれる。


そう言えば、花とよく手を繋いで一緒に帰ったことがあったけど、なんだか遠い昔のような気がするな。


あんな日がまたくるんだろうか。


今朝だって、なんだか彼女の様子がおかしくて不安になってしまった。


目も合わせようとしないし、近づいたら逃げられた。
< 280 / 351 >

この作品をシェア

pagetop