冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
それもこれも根も葉もない噂のせいだ。


俺と花が別れたっていう洒落にならない噂が流れていて、正直うんざりしている。


俺と花はまだ別れてなんていない、よな?


今は彼女が忙しいから会っていないだけ。


今日が無事に終われば、また元通りのはず。


自分にそう言い聞かせて、なんとか前向きに考えようとしてるけど、本音を言えばかなり不安。


「あ、俺べんじょ」


伊達がトイレに行ったので、やれやれと思って急ぎ足で歩いた。


教員用の席の前を通り過ぎようとしたら、高そうなスーツを着た50代くらいの紳士がいきなり立ち上がりこっちを見ているような気がした。


視線を向けたら一瞬驚いたような顔をされたので、軽く会釈してそのまま通り過ぎた。


見覚えがない、知らない人だけどなぜかひっかかる。どこかで会ったことがあるかな。


そんなことを考えていたら、後ろから河井先生が走って追いかけてきた。
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