冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「雨城くん、待ちなさい、ちょっと」


振り返らずに無視して行きたかったけど、仕方なく立ち止まる。


「君、話があるんだよ」


「はあ、でも俺次の100メートルにでないといけないから忙しいんですけど」


「ほんの少しだけだから」


「短めにお願いします」


冷たく先生の白髪頭を見下ろす。


先生の顔は俺より20センチくらい低いとこにあるけど、なぜだかギッと見上げてくる。


「君、単刀直入に聞くが花さんのことはどう思ってるんだね?」


「えっ、こんなところでそれ聞きます?」


先生は真剣に尋ねてきたけど、軽く受け流そうとした。


今ここでそんな話はしたくない。


「いや、ずっと心配してたんだよ。もしかして私のせいで君と彼女が付き合いだしたんじゃないかと」


「……」


まあ、それはその通りなんだけど。


なんていうか、それはただのきっかけであって。
< 283 / 351 >

この作品をシェア

pagetop