冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
つとめて明るく言ってその場を立ち去った。


しっかりしなきゃって思ってペチンと頬を叩いた。


今日はどんなことがあっても、最後まで頑張らないと。


幽霊みたいにフラフラと歩いてようやく自分のクラスの席までたどり着いた。


みんな目の前で繰り広げられる競技を夢中になって応援している。


心なしか昨年よりもずっと盛り上がっているような気がする。


こんな話し声が聞こえてきた。


「普通学科の生徒達ってなかなかやるじゃん。私さっきちょっとだけ話しちゃった。今年は学年対抗だから同じチーム同士頑張ろうねって」


「たまにはこういうのもいいかもね。いろんな人と話せて楽しいし」


そんな会話を聞いたら、ちょっと嬉しくなった。


今回の体育祭では普通学科とセレブリティ学科の生徒達がなるべく交流できるように同じチームにしたんだ。


学科対抗戦ではなくて学年対抗戦で得点を競うような形式。


学科の垣根を取り払うきっかけみたいになればいいねって、委員全員で頑張って署名運動までした甲斐があった。


「体育推薦のマッチョ君がいてカッコよかったー」


「カッコイイと言えば、雨城くん。あれはやばいよね。
ああん、でも急にどうしちゃったんだろ。さっきの100メートル」


クラスメイトの女子達が千景くんの話題で盛り上がり始めたから勝手に胸が跳ね上がる。
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