冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
千景くんはやっぱり人気があるんだな。


さっき別れたばかりの大好きだった私の彼氏。


だけどもはや遠い人のように思えて溜息をつく。


もうどんなに手を伸ばしても届かない人になっちゃった。


どうしょう。またさっきのことを思い出してきて涙がでそうだよ。


クラス席がある場所の後ろでぼんやり立ちつくしていたら、ちえりちゃんがこっちへ走りよってくる。


手にはスマホを持っているみたい。


「花ー、大丈夫?拓海から連絡がきたんだけど花がかなりまいってるみたいだって」


「え?拓海くんから?」


「大丈夫なの?目の周りが赤いけど……」


ちえりちゃんは私を見て、心配そうに眉を下げる。


「雨城くんとなにかあったんでしょ?」


「え、どうしてそれを?」


「だって、花がそんな風になるのって彼のこと以外に考えられないし」
< 295 / 351 >

この作品をシェア

pagetop