冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「おそらくそうかなとは思ってたけど。花があんまり彼に心酔してるから後々、ショックを受けなきゃいいなとは思ってた」


ちえりちゃんは、小さくため息をついた。


「でもさ、それってそんなに悪いこと?」


「え?」


「付き合うきっかけなんて人それぞれだし、そこまで夢を持たなくてもいいんじゃない?付き合ってからの時間の方が長いんだし」


「え、でも」


てっきりちえりちゃんは、彼のことを悪く思うかもしれないなって気がしていたので、この反応に驚いた。


「花が昔から特別扱いされるのが凄く嫌だったのは知ってるけど。
でもこの学園の理事長の娘っていうことは花個人とは切り離せないことだよ。
その上で付き合うと決めたからには相手だってそれなりに花に興味があったんじゃない?」


「……」


本当はちえりちゃんの言いたいこともわかる。


だけど、やっぱり素直に受け入れられない自分もいて。


ずっと千景くんの気持ちがはっきりとわからなかったから、不安だった。


こんな私でもいいのかなって、ずっと思ってた。


だからあんなことがあって、妙に納得してしまったのかも。


ああやっぱり私なんかじゃダメなんだって。


そう思ったら、もうどんどん悪い方にばかり考えてしまって。


「それより付き合ってから、どんな風に気持ちが動いたかの方が大事だし。
彼に聞いてみた?
そこんとこちゃんとじっくり話した?」
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