冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「まあ花が彼を嫌いになったんなら、それまでだけど。
そうじゃないならそんなに結論を急ぐことないじゃん」


「そ、そうかな。でももうさっき別れちゃって。彼だって何も言ってくれなくて」


過ぎた時間は戻らないし。


言ってしまった言葉は取り消せない。


もう何をどうしたって、取り返しがつかない。


その時、次の競技のアナウンスがグラウンド中に響き渡った。


「ラブラブカップル障害物競走に出場の方は入場門にお集まりください」


あーっ。


そうだ、すっかり忘れてた。


この競技に千景くんに一緒に出てほしいってお願いしていたんだった。


もう2人の名前でエントリーも済ませてあるんだ。


どうしょう、いまさら欠場なんてできないよ。


だからって、彼になんて言えばいいの?


ううっ、体育祭当日に別れちゃう時のことまで想定してなかったよ。
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