冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「だから経験者は語るんだよ。いいか、カッコわるくても男にはやらなきゃいけない時があるんだよ」


「だから、泣いてすがりつけって?」


「そうだ、ここでベストを尽くせなければおまえは一生後悔するんだぞ。次の恋にもすすめなくなるぞ」


次の恋なんてどうでもいいが、確かに後悔は残しそうな気はする。


「やるだけやってダメなら、潔く諦めがつくもんなんだよ。
大丈夫、ダメなら俺が慰めてやるから」


伊達の眼鏡の奥の瞳は優しく笑っている。


「伊達……おまえ」


こいつ、ほんとはいいやつなんだよな。
いつも、俺にくっついてきてうっとうしいけど。


俺がモテると気に入らないって拗ねてばかりで面倒くさいやつだけど。


結構友達想いだよな。


やるだけやらないと、か。


確かに伊達の言うことにも一理ある。


なるほどその通りかもしれんって気がしてきた。
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