冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
どうしてこんなにも必死になっているのかわからない。


負けず嫌いにしても度がすぎるというか。
 

「千景くん大丈夫?」


「大丈夫だ、落ちないようにつかまって」


「千景くん、もう1位をとれなくてもいいから、無理しないで」


汗だくの彼が痛々しくて、こっちまで胸の奥が苦しい。


「……に決まってる」


「え?」


「無理なんて……するに決まってるだろ。
ハア……俺だって1位とりたいんだ」


「千景くん?」


「1位とったら、一生ラブラブで幸せになれんだろ……」


え?もしかしてジンクスのことを言ってるの?


「千景くん……そのために?」


やだもう、泣きそう……。


1位をとったら一生そのカップルはラブラブで幸せでいられるっていうジンクス。


それは、今この瞬間に彼の想いを告げられたようなもので。
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