冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
ゴールから数メートル手前で姫抱っこを下ろしてもいいみたいだ。


ずっと横並びに走っていた1位のカップルのわずかながら先へ進んでいた。


「やった、抜いたっ。凄いよ凄い」


ようやく抱っこが終わる地点に着いて、急いで降ろしてもらいようやく地面に足がつく。


「花、走れ」


「うん」


ラストスパートは2人で手を繋いで走るだけ。


あと残り数メートルだ。


懸命に走るけどやっぱり私のせいでさっきの千景くんよりもスピードが落ちる。


ここまできたら絶対に勝ちたいよ。


だけど、さっき追い抜いたカップルがグングン距離を詰めてきた。


うちと違って、男女両方とも足が早い。


ワーワーと湧き上がる歓声は最高潮。


だけど私にはもう何も聞こえない。


ゴールだけを目指して必死に足を前に進めるだけ。


千景くんが力強く私を引っ張ってくれるからいつもの何倍も早く走れる。
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