冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
こんなに速く走ったことなんて一度もない。


辛い、苦しい、しんどい、身体がバラバラに砕けそう。


だけど、もう不可能だなんておもわない。


千景くんと一緒なら私はなんだって出来るよ。


今度こそ迷わない、彼を信じて一緒に前へすすむんだ。


「花、待て、止まれって」


「へ?」


「もう、ゴールしたよ」


ハアハア、すっかり息が上がってる。


いつのまにかゴールを過ぎていたみたいで驚いた。


ゴール地点を通過した後も止まろうとしない私を千景くんが慌てて静止してくれたようだ。


「花、花っ、もう終わったから」


「ええっ、夢中だったからわからなかった」


「だって花、最後は目をつぶって走ってたじゃん」


「うそっ」


でも確かに目をつぶってたかもしれない。


ほんとに夢中だったから。


足を止めたらドバーッと疲労が襲ってきてその場にへたり込んでしまった。
< 336 / 351 >

この作品をシェア

pagetop