冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
1位の副賞でお揃いのノートをもらったんだけど、ただのなんの変哲もないノートなのに凄く嬉しかった。
「私これ宝物にするね」
「うん、そうだな俺も」
千景くんは目を細めて私を愛おしそうに見つめる。
そのまま、そっと抱き寄せられた。
私も彼にしがみついていた。
私達を見て周りがザワザワしてる。
だけどたとえ誰に見られても何を言われても気にならなかった。
「なあ、花。俺きちんと話したいことがある。付き合い始めた時のことや、これからのこと」
耳元に響く彼の真剣な声が心地いい。
「うん、うん」
ジワリと目頭に涙が浮かんでくる。
彼の言葉がすんなりと心の中に流れ込んできたから。
「ゆっくり話そう。もう1日10分なんて言わない。
10分なんかじゃ、俺が足りないから」
「うん、うん」
何度も頷いてギュッとますます彼にしがみつく。
「大好きだよ、花」
初めて言ってくれた。
彼のその言葉をずっとずっと待ち望んでいた。
「私も」
秋の優しい風がのぼせた頬を冷やしてくれて気持ちがいい。
彼の耳元に唇を寄せた。
心から伝えたい、誰にも負けないこの気持ちを。
「私も千景くんが大好き」