冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
なぜだか凄くショックを受けてるみたいな千景くんを慰めた。


彼の光沢のある髪を撫でてヨシヨシする。


「あいつ、10分後に帰るって言ったんだ」


「そ、そっか」


「ふざけやがって、達樹のやつ。10分って」


「うんうん」


だけど、彼が心底悔しがる姿が可愛いくて愛しくて吹き出しそう。


10分ていうのも、兄をからかうために言ってそうだよね、達樹くんたらヤンチャな弟だな。


フフッて小さく笑っていたら、千景くんに腕を引っ張られてそのたくましい胸の上に抱き寄せられた。


「こうなったら10分でもいい」


「え?千景くん?」


びっくりして彼を見る。


「カッコつけてられない」


切羽詰まったようにつぶやく彼。


「もうっ、千景くんったら」


またクスクス笑ってしまったけど意外にも彼は真剣そのもの。


上から覗きこんで、こんな恥ずかしいことを聞いてみる。


「10分で出来るかな?」


「俺にもわからない」


「どうしよっか?」


「だけど10分あれば恋だってできたから」


彼は真っ直ぐに私を見つめて真面目な声でそんなことを言う。


「うん。そうだね。10分あれば案外なんでもできちゃうかも」


たかが10分だけど、私達はそんな短い時間でも大切に愛をはぐくめたんだよね。


「千景くん」


「花」


彼と微笑みあって、とろけるような甘いキスをした。


それから、今よりもっともっとお互いを好きになっていったんだ。


♡(END)♡
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