冷たい千景くんは１０分だけ私の言いなり。

入学式の日に助けられたって？何のことを言ってるんだろう。
すぐには思い出せない。


「わ、わかった。わかったよ。鷹月花さん」


「ほんとに？それじゃあ私とお付き合いをしてもらえるんですか？」


「あー、うん、そーだな」


嬉々とする彼女に曖昧な返事をした。


だけど、河井先生がこちらへ歩いてきたので焦った。


「うん、付き合う、付き合う。
そのことで、ちょっと向こうで話そう」


河井先生はピタリと足を止めて、うんうんと満足そうに頷いている。


それから、彼女の腕を引っ張って廊下を早足で歩いていった。


とりあえず、逃げようと思いセレブ学科の校舎から脱出した。


「はぁ、危なかった」


「あ、あのもう手を離さないとダメ？」


「え？」


気がつけば鷹月花の手をがっしり繋いでいる。


そうだ、一緒に連れて逃げてきたんだった。