冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
だけど、私に対しては全然そんなことはなくていつもニコニコ優しく接してくれるんだ。


まあ、私が理事長の娘だからなんだろうけど。


「あ、あの先生、学校ではお嬢様って呼ぶのはやめてくださいね」


「あ、そうでしたね。すみません」


先生は頭の後ろに手をやって軽く頭を下げるから焦った。


「そんなに、私に気を使わないでください」


慌てて両手をふると、先生は頭を上げて優しく微笑んだ。


目じりにしわを寄せて本当に穏やかな表情。


「もちろんです、花お嬢様。教師として生徒は皆平等に扱っていきますから」


「は、はあ」


だけど、相変わらずのお嬢様呼びは変わらないみたい。


「ところで、また雨城くんを待っているんですか?」


「あ、えっ。どうしてそれを」


先生に知られているなんて顔から火が出るくらい恥ずかしい。
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