冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
また彼女を見たら、瞳をキラキラ輝かせて期待いっぱいの顔をしてて。


「いや実は……俺には少し事情があって。
たとえ付き合ったとしても、キミを満足させられるかどうかわからないんだ」


得意のポーカーフェイスで淡々と説明する。


言いながら、頭をフル回転して考えていた。


彼女を傷つけないような断り方を必死で探した。


「……」


いやいや、そんな都合のいいことがすぐに思いつけたら苦労はしないよな。


(ちょっとだけでも仲良くなれるように)


さっき先生に言われたセリフが頭をかすめる。


「俺、特待生なんだけど、正直な話、かなり勉強しないと今の成績をキープするのが難しいし、家の手伝いやバイトもあって彼女なんてつくる余裕がないんだ」


これは本当の話なのでスラスラ言えた。


「つまり、俺には時間が無いんだ」


彼女は目を丸くして黙り込んでいる。

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