冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
ん?なんだこれ?


こんな青春っぽいことされても、俺は簡単にときめいたりしないぞ。


だけど、ほんの少し胸の奥がフワッと暖かくなったような気味の悪い感覚がして。


まったくガラにも無い。


そんな自分にイラッとした。


「毎日10分彼氏だね」


彼女は無邪気な笑顔で歌うように言う。


まさに上機嫌ってやつ。


「ああ、うん」


意味わかってんのかな?


10分で何ができるんだよ。


だけど1分だってゆずらない。


時は金なりって言葉知ってるかな?


俺は、お嬢様とは違ってあくせく努力しなきゃ、幸せをつかめないただの高校生なんだよ。


たかが10分、されど10分。


しかしこの時。


そんな10分を甘く見ていたのは、他ならぬ俺の方だったんだ
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