冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
でも、でもやっぱりほんの少しだけでも彼に会いたいよ。


だってそうじゃないと、昨日のことが本当は私だけが見た夢か妄想で現実じゃなかったのかもしれないって思えてきちゃう。


私が雨城くんの彼女にしてもらえたなんて、ほんと言うとまだ信じられなくて。


だから、今日絶対に彼に会わなきゃって思った。


「よ、よーし」


こんなことで、負けないもんね。


自分にそっと気合をいれながら、扉へと近づく。


数秒、ためらってからようやく扉を開けようと手を伸ばした。


ガラッ。


だけどその時、誰かが教室の中からその横開きの扉を開けてくれた。


「あっ」


扉を開けたその人を見てドキンと大きく胸が跳ねる。


私の目の前で憮然として立ち尽くしているのはまさかの雨城くん。私の大好きな人。


「来たんだ」

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