冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
まあ、私に対してもかなりの塩だったけど。


今だってこうして会いに来たのに、全然嬉しくなさそう、むしろ迷惑そう。


「行くぞ」


「へっ?」


彼はいきなり私の腕を掴みグイッと引っ張って歩かせる。


廊下を歩いていこうとしたら、さっきの女子が不服そうに声をかけてくる。


「雨城くん、そのお嬢様とどこに行くの?その子ってなんなの?」


ちょっとヒスッぽく聞こえてギョッとして振り返る。


彼女は険しい顔で私のことを睨んでいる。


「あなた何よ、私知ってるんだから。理事長の娘だからって雨城くんをいいようにして」


「え?」


彼女の言ってる意味がよく分からなくてもう一度聞きかえそうとした。


「あの……どういう意味ですか…きゃっ」


だけど、隣にいる雨城くんがいきなり私の肩に腕を回してきた。
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