冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
そればかりか、身体も密着するように抱き寄せられて。


「早乙女、勘違いするな、俺の意志で彼女と付き合ってるんだ」


彼はキッパリとそう言ってくれたから、思わずまじまじと見つめた。


綺麗な三白銀の瞳には真剣さが浮かびあがる。


「雨城くん」


そしたら、私の心にパーっと光がさしたような明るい気持ちになった。


今なら宙にだって浮けるんじゃないだろうか。


「ええ、なによそれ、やだ」


彼女は顔を歪めていまにも泣きそうになっている。


あ、どうしよ、ちょっとだけ気の毒。


もしも私が逆の立場ならと思うと複雑。


「だから、あんまり彼女をいじめるなよ。もしこの子になにかしたら俺が黙ってないからな」


「……っ」


彼の冷たく射るような眼差しに、早乙女さんは一瞬怯んだように見えた。


「う、うん、わかったよ」
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