冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
諦めたようにしょんぼりする彼女。


彼にかばって貰えて嬉しかったけど、同時にすごく驚いていた。


クラスメイトにここまできつく注意してくれるなんて思わなくて。


「こっち」


彼はまた私の腕をつかむと早足で廊下を歩きだした。


「ま、待って。もっとゆっくり」


ひきずられるように歩いていたら、なんでもないところで転びそうになってよろめいた。


わっ、わっ。


私の膝が冷たい廊下を擦ろうとする直前で彼のたくましい腕にギュッと抱き寄せられた。


「大丈夫?」


「あ、ひゃ、ひょ……はい」


思わずおかしな声が漏れてしまうくらいドキッとしてしまう。


心臓が、口からでちゃいそうだよ。


「あ、あの」


「ん?」


至近距離で見つめ合いながら、おずおずと口をひらく。


「さっきはありがとう」
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