冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「えっ、下僕だなんて……。やだ、それおかしい」


私がフフって笑ったら、彼は微妙な苦笑いを浮かべた。


「嫌味のつもりで言ったんだけど……」


彼がひとりごとのように小さく呟く。


「え?なんて?」


「いや、なんでもない。とにかく10分間しか会えない代わりに、なんでも君の言うとおりにしてあげるよ」


「え、どうして?」


「なんていうか、こっちの都合ばっかり押し付けたらフェアじゃないし。
その方が俺も罪悪感を感じなくてすみそうだから」


「ほ、ほんとに?なんでもって、あの……」


無意識に喉がゴクッと鳴る。


雨城くんたらそんなこと言っちゃって大丈夫?


彼は何げなく言ってるのかもしれないけど、そんなこと言われたら色々イケナイ方向に期待しちゃいそう。


頭の中にモヤモヤ湧き上がる想像を、慌ててかき消した。

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