冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「あ、それが昨日風呂上りに食べようと思ってたら、弟たちに全部食べられてて。でもすごく美味しかったって言ってた」


正直に打ち明けてごめんなって言ったら、彼女はいいよって笑って許してくれた。


「そっか、じゃあまた作ってくるね」

彼女は気を悪くした風でもない。


「今度はちゃんともらったらすぐに食べるよ」


「大丈夫、次は弟さんたちの分もたくさん作ってくるから。
でもいいなあ、兄弟がたくさんいたらにぎやかで楽しいだろうな」


「騒々しいだけだよ。花んちは兄妹は?」


「うちは、兄と姉がいるんだけどもう社会人で家を出てそれぞれ一人暮らししてるから寂しいよ」


「へえそうなんだ、俺からしたら羨ましいけどな。静かに勉強に集中できそうだし」


「えっ、勉強?私あんまりしないかな」


そう言って肩をすくめて、エヘヘって笑う彼女。

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