冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
質より量だから、そんな高級な食材じゃない。


みんな食べ盛りだから、味わってゆっくりたべてたらあっという間になくなっちまうから食卓は戦場みたいなものだ。


「むね肉かな、もも肉かな?」


「どうだろ。たぶんももだな」


「そっか、私最近お料理とか練習してて、雨城くんに唐揚げ作ってあげたいな」


彼女はそう言ってはりきってメモにいろいろ書きこんでいた。


「いや、いいよ」


彼女は練習してるなんて言ってはいるけど、明らかに鈍臭そうだ。


そんな料理初心者がいきなり揚げ物を作るなんて、考えただけでも不安。


なにもマズいものを食わされそうで嫌ってわけではない。


俺のせいで彼女が火傷でもしたらって思うと心配なだけで。


「え、どうして?」


しかし、正直にそんなふうに言っても、やめなさそうだから。

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