冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「えー、そんなの1日10分で満足なんて健気すぎるでしょ、花」


「そ、そうかな……」


私のために10分という貴重な彼の時間を割いてもらえるだけでもありがたいんだけどな。


「もっと、恋人らしいことお願いしちゃいなよ。10分なら何でも言うこと聞くって言ってるんでしょ?」


「うん、だけどー」
 

「じゃないと、このまま進展しないと思うよ」


「え……進展って」


それはつまり恋人としてってことだよね?


だけど、いまいち自信が無くて。


彼は私が告白したから付き合ってくれたって言うか。私のことを心から好きってわけでもなさそうなんだよね。


それは、毎日会っているから何となくわかるんだ。


「あっ、噂をすれば。花、あれ見てよっ」


ちえりちゃんが驚いたように声を上げて前方を指さした。
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