冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
すぐにそっちを見たら、黒い上着の集団がゾロゾロと廊下を歩いてきている。


それは普通学科の人たちで、よくみたら雨城くんの姿もあってびっくりした。


そっか、ごくたまにここ総合セレブリティコースの校舎にある化学実験室を普通学科の人たちもつかうことがあるんだった。


偶然会えるなんてまさに運命?かもしれない。


けれど、彼は友達と話していて私に気が付かないみたいで。


彼の隣にはいつだったか私に対して嫌味を言ってきたあの女の子がいる。


たしか早乙女さんって言ったっけ。


よくよく見ると彼女の方が、食い気味に話しているけど雨城くんは能面のような無表情で返事をしている。


彼は明らかに彼女に対しては興味なさそう。


それでも彼女の方は凄く嬉しそうにしている。


うーん、これってまるで自分を見ているかのようでちょっとギクっとするんですけど。


私もいつも彼に話しかける時は舞い上がっちゃって顔面の筋肉がゆるゆるだけど、彼の方はいたって普通だから。


「雨城くん」


彼らのグループが私達の横を素通りしかかった時、慌てて声をかけた。


だけど、彼は右側にいる早乙女さんと話していて聞こえていないみたい。

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