冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「花、こいつ伊達っていうんだ。中学からの腐れ縁」


雨城くんが自分の友達を紹介してくれたのが素直に嬉しくって私も伊達さんに挨拶する。


「鷹月 花です。よろしくお願いします」


「あ、ども伊達悠(だて ゆう)です」


「でも花ちゃんってほんとに素直そうで可愛いよね。千景に泣かされたらいつでも言ってね」


彼は眼鏡の奥の明るい瞳でこんなことを言う。


可愛いだなんて面と向かって言われること自体あまりないから、パーって顔が赤くなる。


うわっ、私ってすぐに赤くなっちゃうから恥ずかしい。


「え、えと……」


どうリアクションすればいいかわからなくて、両手を頬にあてて俯いてしまう。


「こら、花を口説くな」


そう言って伊達くんの後ろから蹴りを入れる雨城くん。


ちょっと不機嫌そうな顔をしている。


「いてっ、いいじゃん。
お前が大切にしないんなら俺が慰めてあげようかと思っただけだろ。
てか10分ってなんなんだよ。おまえそのうち絶対痛い目にあうぞ」


伊達くんは不満げに唇を尖らせる。

< 91 / 351 >

この作品をシェア

pagetop