冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
きっと嫌味の一つや二つ言われちゃうんだろうなと覚悟した。


10分ルールのことを私が勝手にペラペラ他の人に話しちゃったからこんなことになったわけだし。


彼が何か言葉を発するよりも先に謝りたおして許してもらおうって思ったその時。


「早く手をはなせ。花から離れろ」


雨城くんは思いもよらない言葉を私ではなく拓海くんに向かって低い声で言った。


私がポカンとしている間に、雨城くんは拓海くんが私の肩に乗せていた手をバシッと払いのけてしまった。


その静かな威圧感と迫力にさすがの拓海くんも言葉を失ったみたいで。


それから、雨城くんは私に向き直り、熱い瞳でじっと見つめてきた。


な、なにこれなにこれ?


胸の奥がうずいたようにキュウンと鳴り響いた。
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