サザンカトラブル
彼が実家に手紙を入れていると仮定したら、少なくとも三ヶ月前から私を知っていたのか。


...それはそれですごい。


若干尊敬する。



「キミが風邪を引いていて、危ないと思ったから...

急遽、お迎えの準備をしたんだ。」



口に入った豆腐の淡白な味と、ほんのりとする出汁の香りと、コーヒーの匂い。



「キミはいつもひとりで可哀想だ。
大学でも、帰り道でも、バイト中も」


「......」


「でもこれからは、僕がいるよ。
僕がキミの隣にいてあげる」



男はそう言って私の頬を撫でる。


別にもういいか、と思っている自分がいた。


だって彼の言う通りなのだから。


ずっと一人、ずっと。


両親も兄弟も死んだ私には、もう何も残るまい。



「こんな暗い部屋、すきだったよね」


「...うん」


「この部屋は僕とキミの部屋だから、好きに使ってね」



あ、そうそう、と言って言葉を付け足す。



「この家は自由に歩いていいけど、外はダメだからね」



監禁と言うより軟禁だ。
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