いつか咲う恋になれ
そしていよいよ私達の番になった。やっぱり中に入るのやめようかな。

「紗倉ちゃん怖いの?何なら俺にしがみ付いてもいいよ」

「いえ……大丈夫です(多分)」

小谷先輩の優しさをやんわり笑顔で断ったものの、私に不安と恐怖が私を襲う。入口でほのかな(あか)りだけ渡されて中に入る。

これは作り物……これは作り物……

頭の中でずっとその言葉をリピートさせながら、暗幕などで暗くなっている体育館の中をゆっくりと歩いた。

文化祭でこんなクオリティの高い肝試しを完成させるなんて信じられない。私はビクビクしながら小谷先輩の後ろを隠れるように歩く。

そして肝試しも終盤に差し掛かった頃、突然冷んやりとした空気に包まれる。

「な、何か冷んやりしません?」

また何かの仕掛けが出てくるかもと怯えながら、私は左右をキョロキョロして様子を伺う。

何もなさそう?ホッと胸を撫で下ろしたその時……私の後ろに何か気配を感じた。

サーっと一気に血の気が引く。そして恐る恐るゆっくりと振り返ってみると何かと至近距離でバッチリと目が合った。

「キャーッッ」

恐怖のあまり思いっきり悲鳴をあげ、そのままストンと座り込んでしまった。

「紗倉ちゃん!?大丈夫?」

私の異変に前を歩いていた小谷先輩が気づき、座り込んだ私の前に来る。
< 117 / 163 >

この作品をシェア

pagetop