いつか咲う恋になれ
「いえ、話を聞いてもらってもいいですか?」

私は彼氏と友達がキスしていた場面を見てしまった事、話を聞かずに逃げ出してしまった事など全部話をした。

「……それは逃げたくもなるね」

話を聞き終わった先輩は若干引きつった顔になっている。

「それで紗倉さんは彼氏の浮気を許すの?それとも別れちゃう?」

そうか、先の事も考えなきゃいけないんだ。

「私は……」

私は言葉を詰まらせ下を向く。自分の気持ちが分からない。私はどうしたいのだろう……。

「正直俺には今の紗倉さんの気持ちは分からないけど、取り敢えず気持ちの整理がつくまでは逃げてもいいんじゃない?」

話を聞かずに逃げてしまって悪い事した気になっていたけど、逃げていいと言われて気持ちが軽くなった。

「先輩に話を聞いてもらって良かった。少し気が楽になって、ちゃんと自分の気持ちと向き合えそうです」

「良かった」

先輩と話をしているうちに乾燥機に入れていた制服が乾いたので、私は制服に着替える。

「駅まで送るよ」

そう言って先輩はスッと眼鏡をかけた。一緒に歩いているところを見られて噂になったら大変だからと眼鏡で変装するみたい。

それでも全然イケメン隠せてないけどね。

1人で帰ろうとも思ったけど、土地勘のない場所だし結局先輩に甘えてしまった。

傘を借りて先輩と並んで歩く。

「今日は本当にありがとうございました」

駅に着きお礼をすると、先輩が尋ねてきた。

「明日、少し早めに学校来れる?」

「え?はい」

「じゃあ明日の朝、弓道場に集合ね」

弓道場?何でだろう。

聞き返そうと思ったけどちょうど電車が来る時間になり、私は分かりましたと頭を下げてそのまま駅のホームへ向かった。
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