いつか咲う恋になれ
私は一足早く弓道場を出て自分の教室へ向かう。そして教室に着くと、私の席に安住ちゃんが足を組んで座っていた。

「あれ?おはよう安住ちゃん」

「おはよう……じゃないでしょ」

安住ちゃんはじぃっと私を睨んでいる。やっぱり昨日メッセージに返信しないで既読スルーした事怒っているみたい。

私は苦笑いしながら鞄を置く。

「昨日……柳から全部聞いた」

「あ……うん」

「……もっと落ち込んでるかと思ったけど、そうでもなさそうね」

「落ち込んだよ、昨日は特にね。でも逃げてちゃダメだよね」

「気持ちの整理はついた?」

「うーん、若干?」

香月先輩のおかげでだいぶ冷静になれたけど、まだハッキリと気持ちの整理はついてなかった。

「また昼休みにくるから、その時に続きを話そう。じゃあテスト頑張って」

「安住ちゃんもテスト頑張ってね」

思ったより冷静な私を見て安心したのか、安住ちゃんは手を振って自分の教室へ戻って行った。

そして昼休み、予告通り安住ちゃんは私のクラスにやって来た。

「紗倉、行くよ」

「え……何処に?」

安住ちゃんは私の腕を掴み、強引に何処かに連れて行こうとしている。

そのまま行き先も分からないまま安住ちゃんに連れられて足早に廊下を歩く。

あまりの気迫に廊下を歩く生徒達は私達の歩く邪魔にならないよう廊下の端に避ける。

安住ちゃんはズンズン廊下を歩き、ピタッと立ち止まった。

柳のクラスだ。

「あ、安住ちゃん、ちょっと」

私が柳の教室の前で足がすくんでいると安住ちゃんは一人で教室に入り、少ししてから柳と一緒に教室を出てきた。

「……紗倉!?」

私に気づいた柳はパッと私から目を逸らす。つられて私も柳から目を逸らした。

一瞬見えた柳の目は赤く腫れ上がっていた。きっと昨日泣き明かしたんだろうな。
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