いつか咲う恋になれ
「……紗倉ごめん。本当にごめんなさい」

謝る柳の目からは涙が溢れていた。私、どうしたらいいんだろう。上手く言葉が出てこない。

「……でも日に日に好きっていうのを抑えきれなくなってきて、紗倉と山下を見てるのが正直辛かった。もうこんな気持ちでいたくない。だからきちんと自分の気持ちにケジメをつけて次の恋に進もうと思った」

柳がそんな辛い思いをしてたなんて……。話を聞いていても山下君の事が好きなのが伝わってくる。

「だから昨日、山下に告白した。もちろん振られたけど、これで前に進める…でもそう思えなかった。私の方がずっと山下の事好きだったのにって悔しさが込み上げてきたの。だから一回だけって無理言って…キスした」

柳の話を聞いて、私は昨日二人がキスしている場面を思い出してしまい、目をキュッと(つむ)る。

そしてまた沈黙する。多分次は私が話す番。

でも私は……

現実を見るように瞑っていた目をそっと開く。そしてニコッと微笑んだ。

「何かさ、どうしていいのか分からないや。柳は好きな人に告白した、ただそれだけ。なのに何でこんなに辛いんだろうね」

そう言って空を見上げる。広がる青空にゆっくりと流れる雲…穏やかな空を見て私は心を落ち着かせた。

「さ、紗倉……」

「ごめんね、柳。今はまだ今までみたいに一緒にいれない」

柳が何か言おうとしていたけど、私はその言葉を(さえぎ)って自分の言葉を伝え、立ち上がって屋上を出た。
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