いつか咲う恋になれ
「ん?」

私がじぃっと見てると、香月先輩は不思議そうに私を見返す。

「な、何でもないです」

色々考えてしまったのがバレないように、冷静を装いつつ内心焦りながらショコラケーキをパクパク口に入れた。

「ケーキ食べ終わったら一緒に勉強する?けど帰りが遅くなったらお家の人が心配するかな」

「家に帰っても一人なので遅くなっても大丈夫ですけど……」

一緒に勉強するのは分からない所を聞けるし私にとっては有難いけど、先輩にとっては学年違うし私がいると邪魔になるだけでは?と心の中で思う。

「一人?」

私の話に香月先輩は首を傾げる。

「はい。母と二人暮らしなんですけど今仕事で県外に行ってまして、しばらく帰って来ないんです」

両親は私が中学生になった時に離婚した。それからは母と二人で暮らしている。と言っても、母は今でも父と連絡を取り合って会ってるし関係は良好だ。

「そうなんだ。じゃあ寂しいね」

「あはは、だいぶ慣れました。毎日ご飯作るのが大変ですけどね」

まぁ慣れざるを得なかったっていうのもあるけど。私が笑いながら話をすると、香月先輩はニッコリして私を見てきた。

「へぇ、紗倉さんの手作り料理食べてみたいな」

香月先輩の微笑みに私はまた顔が赤くなる。冗談だと分かっていても先輩の微笑みは破壊力抜群だ。
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