いつか咲う恋になれ
「え、演劇部は何をされてるんですか?」

誰も居ない教室に若干不安を感じ、恐る恐る森野先輩に聞いてみる。

「誰も居ないから不安になった?今、弓道部で真尋先輩のデモンストレーションやってるみたいで、女子生徒はみんなそっちに集まってるんじゃない?演劇部(うち)の女子部員も仕事そっちのけで真尋先輩を見に行ったよ」

女子部員は香月先輩の元へ、男子部員はビラ配りに行って森野先輩は受付しながら留守番ってわけか。

「はは……大変ですね」

「俺的には暇な方が有難いからいいんだけどね」

そう言いながら森野先輩は椅子から立ち上がり、私達を教室に招き入れる。

そして、隅っこに置かれた横長のハンガーラックをガラガラと私達の所へ移動させた。

「これは?」

演劇部の衣装かな?たくさんの服がハンガーにかけられている。

「演劇部の衣装でコスプレ体験やってるんだ。好きなの選んでいいよ」

コスプレ!?予想外の企画に私と優莉は無言で顔を見合わせる。

「私はちょっと遠慮しておきます」

優莉はやっぱりこういうのは苦手みたいで少し後退(あとずさ)りしてコスプレを拒否する。私も恥ずかしいしやめておこうかな。

「わ、私もちょっと……」

私も断ろうとしたが、森野先輩は私達の言葉を聞いていないみたいで、たくさんある衣装の中からスッと二つの衣装を取り出した。
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