いつか咲う恋になれ
ーーコンコン

「入って大丈夫?」

部屋をノックして声をかけると、中からか細い声で『大丈夫です』と返事が返ってきた。

部屋の中に入り、ベッドに横になっている穂花ちゃんのところへ行く。

「食欲ないだろうけど、少しでも食べて薬飲まなきゃ」

「ありがとうございます」

穂花ちゃんは起き上がり、すりおろしりんごを受け取ろうとする。そこで俺は一つ思いついた。

「食べさせてあげる……はいあーん」

「えっ、えっ……」

穂花ちゃんは俺が差し出したスプーンに戸惑いながらもパクッと食べた。

「美味しい?」

「恥ずかしくて熱が上がりそうです」

ニッコリしながら聞くと穂花ちゃんは困ったように答える。

「あはは、それ以上熱が上がったら大変だね。じゃあどうぞ」

すりおろしりんごの入った器を渡して、食べるところを見ていた。小さい口でゆっくりとリンゴを食べている。やっぱり食欲なさそうだ。

薬まで飲んでまたベッドに横になる。熱で顔が赤い。きついだろうなと穂花ちゃんの頭を軽く撫でた。

「……真尋先輩」

「ん?」

「今日来た彼女は……」

何か言いたそうに熱で潤んだ目で俺を見る。今日来た彼女って椎野さんの事か?

「俺の元カノだよ。ヨリを戻したいって言うのを断ったら泣かれちゃった」

「断ったんですか?」

「うん。俺には穂花ちゃんがいるから」

ニッコリしながら言うと、穂花ちゃんも何だか安心したかのように笑顔を見せた。
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