いつか咲う恋になれ
「うわぁ凄い人」

さすが夏休み。平日とはいえたくさんの若い人達が遊びに来ている。

「紗倉、迷子になるなよ」

「ならないよ!」

他の四人がニヤッとしながら私を見る。確かに一番迷子になりそうなのは私だけども。

早速大型プールに入って遊ぶ事にした。みんなぐいぐい人混みをすり抜けて中心の方に進む。

「ちょっとみんな早い〜」

私一人だけ上手く人混みをすり抜けられず置いていかれてしまった。

ーードンッ

水の中を上手く歩けず、後ろによろけてしまい、背中を人にぶつけてしまう。

「す、すみません」

「いえ」

慌ててぶつかった相手を見る。そして二人して『えっ?』と驚いた表情のまま固まった。

「ま、真尋先輩!?」

「穂花……ちゃん?」

名前を言った後、二人して自分で自分の口を塞ぐ。今は恋愛ごっこじゃない。ただの先輩後輩の時間だ。

お互い背中合わせになりコソッと会話をする。

「香月先輩が何でここに?」

「勉強の息抜きに引退した三年弓道部の奴らと遊びに来たんだ。偶然だね」

本当に凄い偶然……それにしても、真尋先輩って引き締まった身体をしてるなぁ。チラッと先輩の水着姿を見て頬を赤くさせる。
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