いつか咲う恋になれ
「モテ過ぎるっていうのも大変ですね」

私は真尋先輩を見てクスッと笑う。

「もう帰ろうかと思ったんだけど、穂花ちゃんも花火大会来てるって思ったら……なんか会いたくなっちゃった」

そんなストレートに会いたくなったとか言われたら……なんか顔が火照ったように熱くなった。赤面してるのバレないようにパッと下を向き、先輩から視線を逸らす。

これは恋愛ごっこなんだから真に受けないようにしなきゃ。そう思い込んで心を落ち着かせる。

……でも嬉しい

「もうすぐ花火の時間だけど、穂花ちゃんそろそろ友達のところに戻る?」

密会から少し経ち、真尋先輩は携帯で時間を確認して私の方を向く。

「いえ、あの……迷惑じゃなければココで一緒に花火見ていいですか?」

「……うん、じゃあ一緒に花火見ようか。穂花ちゃんとの良い思い出になるし」

思い出……その言葉を聞いて胸がキュッとなる。

来年は真尋先輩も私もそれぞれ違う人と花火を見るんだろうな。だから一夏(ひとなつ)の思い出でもいい。

私は今、真尋先輩と一緒に花火を見たかった。

そして花火が次々と打ち上がる。気がつくと私と真尋先輩は肩が触れるくらいの距離で、お互い指を絡めて手を握っていた。

花火が彩る空を見上げながら、ただただこの二人の時間がいつまでも続けばいいのに……と願った。
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