異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 王宮は広い。

 そう、日本の皇居並みに広いかな?

 周囲は緑に囲まれて公園みたいになっているし離宮やら魔道士の塔やらそういった建物が廻廊で繋がっている。

 あたしは普段お家から王宮までは人目につかないように猫の姿で通い、そしてマリカの姿で出入りして。

 長い廻廊を歩いて塔まで出勤? しているのだった。



 お母様には猫の姿になれることは話した。

 一人で王宮通いするのにあんまりにも心配するし、侍女を引き連れ馬車で物々しく通うのはマクシミリアンに見つかりそうで嫌だって言ったら猛反対されて。

 とりあえず自由に猫になる事が出来る様になった事。ある程度身体を守る魔法が使えるようになった事。そして、人目につかないようになる魔除のブローチを頂いた事を話してなんとか一人で通う許可を貰ったのだった。 


 でも。

 猫になって見せてって言われてみーこになってみせると、お母様。

「ああマリアンヌ。なんて可憐でもふもふなんでしょう」

 そう言ってあたしに抱きついてほおをすりすりさせて。

 思いっきり身体をもふられた。

 聞けば、猫になったあたしをもふもふしている間にもふもふ大好きになってて。

 あたしが人間に戻った後はそのことにはもちろん喜んだのだけれどもふもふが出来なくなったことはものすごく残念だったのだとか。

「これからも時々もふもふさせてほしいわ」

 そうおねだりされてしまったあたしとマリアンヌ。しょうがないから了承したんだけどね?

 あたしとしても時々お屋敷でねこになってまったりできるのはうれしかったけどね。

 暖かい日差しを浴びながらベランダで丸くなって寝ていると、なんだかほんと幸せな気分になるの。

 ねこもいいなぁって、そういう時はほんと実感するんだよ。





 そんなこんなでいつものように王宮に到着したあたし。人目につかない角でさっとマリカの姿になって大門の門番さんに挨拶する。

「おはようございます。今朝も早くからお仕事お疲れ様です!」

「ああ、マリカさんおはようございます。今日も元気ですね!」

「あははー。あたし元気だけがとりえだから」

 わりと若い門番さん、彼とはすっかり仲良くなった。

 そんな挨拶を交わし大門を潜る。

 ここでは身分証があれば通してもらえる。食材とか物品とかの業者さんも出入りするから流石に魔力紋ゲートは設置してないみたい。

 奥の中門を潜ると廻廊があちこち伸びてて、あたしはそのうちの一番左側の道を進んだ。
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