異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 昼前には森に入った。

 そろそろ周囲には魔獣の気配がうようよと感じられるようになってきた。

 一角ウサギやドリルモグラ、キメイラスライムにゴブリンソード、などなどがまず近くに現れては騎士達に屠られていく。

 まあこのくらいのサイズの魔獣は倒して手に入る魔石も屑みたいなもので、わざわざ回収するまでもない。

 大地に還しておくのもありだ。



 この世界に真那(マナ)()が実体化した結晶体。それが魔法結晶や魔石と呼ばれるものだ。

 世界はエーテルの海に浮かぶ泡。

 泡の表面がこの世界の空間。宇宙。

 で、その泡の外にあるエーテルの事を真那(マナ)、泡の閉じたその中にあるものが()と呼ばれている。

 ってこれは最近レティーナさまに習った世界の仕組み。

 ちょっとSFっぽいよね?

 エーテルっていうのは神様の氣。万物を構成する根源。そしてそのうちの世界の外を埋め尽くすものが真那(マナ)、内に篭っているのが()。本来はおなじエーテルなのだけど、性質が違うのだ。

 その魔が凝縮したものが魔石。そしてその魔石を身に宿したものが魔獣となるのだ、と。



 だから本来、魔獣はこの世界の裏側にある魔界にあるべきもので、それがどうしてなのか時々こうしてこちらの世界に溢れてくる。



 その昔、魔界と人間界が争いになった時。

 その戦いを終わらせるため魔界に赴き魔王を倒した大賢者が居たらしい。

 彼女は魔王を倒し、そして壊れそうになった世界を守るために自分の命を犠牲にしたのだ、と。

 そう伝説に残ってる。

 大賢者にして大聖女。ラギレス・マギレイス。

 今のシステムとしての大聖女は彼女が残したものだと言う話もあるみたい。


 ふふ。

 なんだかとっても興味深いよね。



 森の奥に進むごとにだんだんと魔獣が増えてくる。

 タナトスベア、リザードドラゴン、と巨体の魔獣も出現し、白騎士団は苦戦を強いられた。

 そんな中、フェリス様とアーサーの持つドラゴンスレイヤーが輝きを増し、一体、一体、と、確実に魔獣を倒していった。

 あれは……。

 アークやディンが宿ってる。

 剣自体が魔法を帯びて光り輝いて。

 そして。

 怒涛のように押し寄せていた魔獣の群れもなんとかその数を減らしていったのだった。
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