異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 お母様はジュディ王妃とお茶を飲んで待ってるからって。あたしはアンジェリカに手を引かれ薔薇園に向かった。

 子供の時も、こうして手を引いてくれたっけ。

 そんな事も思い出す。

 後宮から薔薇園までの近道があるんだよ、と悪戯っぽく笑うアンジェリカ。

 なんだかね。うん。


 外の廻廊じゃなくて王宮のど真ん中を突っ切る感じの近道。

 地下にこんな道があるなんて知らなかったな。とか、普通に感心しつつあたしはアンジェリカに手を引かれるまま歩いて行った。


「さああとはここから出ると薔薇園の中なんだよ」

 と、ちょっと秘密の扉っぽい天井の扉を開けるアンジェリカ。こんなドレスで通る所じゃなかったのか、あちこち煤がついちゃったけどあんまり気にして無い様子。

 階段を上がるとそこは、あの思い出の広間。ガーデンチェアに可愛く腰掛けるアンジェリカ。

「ここ、子供の頃から大好きだった場所なんだ」

 そうにっこり笑うその姿に、あたしはちょっときゅん、として。

 やっぱり、好きなんだなぁ。そう自分の心と向きあった。

 まあでも、忘れなきゃ。アンジェリカはあくまで仲のいい従姉妹。そう思って居なきゃ、いけないよね。

 あたしがいくら好きでもね。

 そう。ちょっと心に影が落ちる。

 反対側のチェアに腰掛けたあたし。

 周りの薔薇の匂いでむせたのか、何故か涙が出て。



「わっ、マリカ! どうしたの!」

 そう心配そうな顔を近づけてくるアンジェリカ。

 もう。この子はほんと、恋愛感情とかそんなのとは別な所で女の子には優しいんだな。そうおもう。

 それが、ちょっと、辛い。

「いえ。なんでも無いんです。ちょっと薔薇の香りにむせたみたいで……」

 そう言い訳するあたしのほおに、涙がいっぱい溢れてきて。

(ごめん。マリアンヌ。ちょっと変わって。あたしこれ以上はダメみたい……)

(もう。茉莉花ちゃんったらしょうがないですね。わたくしの心も引き摺られちゃってますけどまだ茉莉花ちゃんよりはましかなぁ)

 あたしはそう、マリカの姿からマリアンヌの姿にマジカルレイヤーチェンジした。

 あたしの周りに金色の粒子がぶわんと湧き立ち。

 それがあたしを包み込んだ。そのあと。


 現れたあたしが急にマリアンヌの姿になっていたことに、アンジェリカは少し驚いたようだった。
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