異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 薔薇園を抜け出しゆく道すがら。

「ごめんなさいねアンジェリカ様。わたくしどうしてもマクシミリアン様は好きになれなくて……」

「ううん。しょうがないよ。でもちょっと気になるな」

 え? 何?

 どうしてマクシミリアンが嫌いかって事?

「何を……、でしょうか?」

「何、かぁ。僕が気になるのは君が好きな人の事だけだけどね。マクシミリアン兄様はあの性格だし、知れば知るほど嫌いになるのはわからなくもないしね」

 ああ。アンジェリカとマクシミリアンの仲は悪い、のかな? やっぱり。

 に、しても。

 気になる、かぁ。

「あれは、婚約を断る口実ですわ。今のところ他にお付き合いしている男性はいませんし……」

「そっか口実か。なら、いいんだ」

 そう言って天井を見るアンジェリカ。


 あたしも。そんなアンジェリカの横顔を眺めてた。





 ☆☆☆



 気怠い表情でお母様達のまつ後宮へと戻ったあたし。

 朝わりと早い時間にこちらについたのだったけれど、気がつけばもうお昼になろうとしていた。

「ただいま戻りました」とアンジェリカが言うその横であたしも会釈をして。

 お母様があたしの姿を見て、

「あらまあ。途中で戻ったのねマリアンヌの姿に」

 と。声をかけてくれた。

「ええ。お母様。でもそのせいかマクシミリアン様に見つかってしまって」

「それは不運でしたわね」

「マクシミリアン様はまだわたくしと婚約しているとおっしゃって。アンジェリカ様が正式に破棄されたのではとおっしゃってくださったのですけど……」

「まあまあ。それであなたはどうしたいの?」

「わたくしは……、お断りしました。でも、そうしたら怒り出してしまって……」

「お兄様のあのいきなりキレる性質は、マリアンヌにはきついかもね」

「あらあら、アンジェリカ、そんな言い方をするものではありませんよ?」

「いいんです。あんなの。わたくしは大っ嫌いです」

「まぁ。こまったこと」



 お母様達にはお母様達の気持ちもあるのだろうけど、あまりそういう事は口に出さない。あたし達がマクシミリアンの事を嫌いだと発言することについてはしょうがないと思いつつ困った事だと考えているのかもしれないな。そういう風にも思う。

 仮にも相手は王位継承者だ。蔑ろにしていい相手ではないものわかってる。

 でも。

 あたしは。わたくしは。マクシミリアンだけは嫌だなぁ。そう感じてた。
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