異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 待ち合わせの場所にしれっと現れたアーサー。

「だってマリアンヌの護衛でしょ? 別の人になんか任せられないよ」

 そうにっこり笑顔で耳打ちされると、嬉しいのとふにゃぁなのとで困惑してそれ以上突っ込めなかった。

 だけどもね? アーサーは王女様なわけでしょ? あたしなんかよりも守られなきゃいけない立場じゃないの? ほんとは。

 あと他の護衛はクラウディアとコルネリア。全員女性ってことじゃない。よくフェリス様が許可したよね、とかも疑問。

 まあ今は恋愛とかも考えられるような精神状態じゃないから男性が居ないからってそんなことに不満を持ってるわけじゃないけどどうしたって女性だけだと攻撃能力に欠けるような気がするのはしょうがないことで。

 この間の遠征だって、クラウディアとコルネリアはほとんど戦闘に参加してないし、ね?

 っていうかフェリス様、アーサーの事知らないの?

 そっか。そうだよね知らないかもしれないよね。



 そんなことをつらつら考えて馬車に乗った所で、あたしの真前に座ったアーサーの笑顔がなんだかやっぱり辛くって。

 あたしはそうそうにマリアンヌに変わって貰った。

 マジカルレイヤーの重ねがけでもう一回茉莉花マトリクス被せたけどほぼ変化なしだから気がつかれなかったよね?



(もう。茉莉花ちゃんいい加減復活したかと思ったのに。やっぱりまだダメ?)

(ごめんねマリアンヌ。今度は溶けないように気をつけるから)



 そういうと茉莉花、心の奥底に潜って行った。

 もう! しょうがないなあ。


 ☆☆☆


「まず最初の目的地はアストリンジェンだけど、今回は野営とかは無しだからね、ちゃんと旅館に泊まるから」

 せっかくの旅だ。馬を走らせての強行軍ではなくのんびりとゆくことにした。

 アストリンジェンには国内最大級の図書館もある。そこでもう少しいろいろ調べてからでも遅くないし。

 その先にあるアンダーノウスの街には巨大な地下迷路の遺跡もあるって話だ。

 そこにも何か手がかりがあるのかもしれない。

「旅館の予約はしてあるんですか? マリカさん」

「そこは抜かりはないよアリア。ちゃんとうちのセバスチャンが手配してくれたから」

「はう。そういえばマリカさんちってお金持ちでしたっけ」

「うー、べつにお金持ちとかそういうのとは違うかも? だけど」

「はは。まあね、マリカの実家はお金持ちだよね。ってことで僕らの部屋もちゃんと手配されてるのかな?」

「もう。アーサー様ったら。ええ、ちゃーんと手配してありますよー。一応ツインを三部屋確保しましたからね。護衛騎士2、3人ってお話でしたから」

 とりあえず昼過ぎにはアストリンジェンに入れるはず。図書館で調べ物するのは明日朝からにして今日は街をみてまわるのもいいかな。

 少しくらいは観光と洒落込んでも良いよね?
< 53 / 92 >

この作品をシェア

pagetop