異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
アストリンジェンは若者の街だ。
実際の年齢とかそういう意味ではなく、精神的に若い、そういう街。
もともとは白いレンガが敷き詰められた路地に白いレンガで建てられた建物が並ぶ白い街並みだったというが、今やそこらじゅうが色とりどりのペンキで塗られ鮮やかな色彩の街となっている。
芸術的な事はよくわからないけれど、壮大な滝が描かれた建物や火山や森が描かれた建物、そして大きなドラゴンが羽ばたいている絵の描かれた旅館。
そんな赤龍亭が今夜の宿だった。
これは茉莉花と記憶を共有して知った事だけれど、わたくしたちのこの世界は彼女にしてみたらほんとう、魔法の世界である、と。
実はこの街の白煉瓦にしても上下水道にしても人の手によるインフラ整備という茉莉花の元世界では常識だった方法は採られて居ない。
地面のレンガ一つ、建物の壁一つ、壊れたものは自動で修復する。何千年もの間そうしてこの世界を保っているインフラ。この世界に満遍なく存在するギアが、それを担っているのだ。
増築や改築と言った概念は聞いたことが無かった。
まあたぶん、あたしが知らないだけなのだろうけど。流石にね?
大昔に描かれたこの街の設計図の魔法陣。
街の中心に鎮座したその巨大な魔法結晶に描かれた魔法陣を書き換えることができれば良いのだろうし。理論的には。
まあね。それでも普通の若者たちにはそんな事はできないし。
自分たちの街を無機質な白のままにしておくことに耐えられなかったのか、過去から連綿と続くこの街の文化の賜物なのか。
この街の色彩豊かな絵の数々は、そんな若者たちの心の現れのような気がして、なんだか好きだ。
まず赤龍亭に荷物を下ろして馬車を預けて。
今回は御者は騎士様三人で交代で務めてくれたから、疲れてるかなって思って街では別行動を提案した、の、だけど。
見事に全員に反対された。
「どうして? この町でそんなに危険な目に遭うとも思えないし。みんな今日くらい行きたいところ行ったりしても良くない?」
「僕はマリカの護衛だからね。そのために来てるんだから」
「私たちだってそうですよ。ここでマリカ様から離れるなんて!」
「はう。マリカさんは人気だね。あたしはやっぱりこの世界よくわからないしできればマリカさんと一緒がいいなぁ」
「ああ、アリアは別ね。あたしアリアの為にここに来てるんだもの。一緒にいろいろまわりましょ?」
「あは。ありがとうマリカさん」
「ずるいですよ! 私たちも是非ご一緒させてください!」
「じゃぁこうしよう。まずみんなで食事をする。お昼だしね。そのあとは行きたいところをそれぞれ決めて、それがもし一緒ならそのままみんなで一緒に行動してもいいって事じゃないかな?」
「まあ、行きたいところも一緒ならしょうがないですけど……」
「はい。決まりね。お昼は赤龍亭の食堂でいいかな? いろいろメニューがあってみんな美味しそうだよ?」
そうにっこりと微笑むアーサー。
もう、ほんとこの子、女の子なの? そのハンサムな笑顔にくらっときたあたしは、頭を振って手を額に当てた。
実際の年齢とかそういう意味ではなく、精神的に若い、そういう街。
もともとは白いレンガが敷き詰められた路地に白いレンガで建てられた建物が並ぶ白い街並みだったというが、今やそこらじゅうが色とりどりのペンキで塗られ鮮やかな色彩の街となっている。
芸術的な事はよくわからないけれど、壮大な滝が描かれた建物や火山や森が描かれた建物、そして大きなドラゴンが羽ばたいている絵の描かれた旅館。
そんな赤龍亭が今夜の宿だった。
これは茉莉花と記憶を共有して知った事だけれど、わたくしたちのこの世界は彼女にしてみたらほんとう、魔法の世界である、と。
実はこの街の白煉瓦にしても上下水道にしても人の手によるインフラ整備という茉莉花の元世界では常識だった方法は採られて居ない。
地面のレンガ一つ、建物の壁一つ、壊れたものは自動で修復する。何千年もの間そうしてこの世界を保っているインフラ。この世界に満遍なく存在するギアが、それを担っているのだ。
増築や改築と言った概念は聞いたことが無かった。
まあたぶん、あたしが知らないだけなのだろうけど。流石にね?
大昔に描かれたこの街の設計図の魔法陣。
街の中心に鎮座したその巨大な魔法結晶に描かれた魔法陣を書き換えることができれば良いのだろうし。理論的には。
まあね。それでも普通の若者たちにはそんな事はできないし。
自分たちの街を無機質な白のままにしておくことに耐えられなかったのか、過去から連綿と続くこの街の文化の賜物なのか。
この街の色彩豊かな絵の数々は、そんな若者たちの心の現れのような気がして、なんだか好きだ。
まず赤龍亭に荷物を下ろして馬車を預けて。
今回は御者は騎士様三人で交代で務めてくれたから、疲れてるかなって思って街では別行動を提案した、の、だけど。
見事に全員に反対された。
「どうして? この町でそんなに危険な目に遭うとも思えないし。みんな今日くらい行きたいところ行ったりしても良くない?」
「僕はマリカの護衛だからね。そのために来てるんだから」
「私たちだってそうですよ。ここでマリカ様から離れるなんて!」
「はう。マリカさんは人気だね。あたしはやっぱりこの世界よくわからないしできればマリカさんと一緒がいいなぁ」
「ああ、アリアは別ね。あたしアリアの為にここに来てるんだもの。一緒にいろいろまわりましょ?」
「あは。ありがとうマリカさん」
「ずるいですよ! 私たちも是非ご一緒させてください!」
「じゃぁこうしよう。まずみんなで食事をする。お昼だしね。そのあとは行きたいところをそれぞれ決めて、それがもし一緒ならそのままみんなで一緒に行動してもいいって事じゃないかな?」
「まあ、行きたいところも一緒ならしょうがないですけど……」
「はい。決まりね。お昼は赤龍亭の食堂でいいかな? いろいろメニューがあってみんな美味しそうだよ?」
そうにっこりと微笑むアーサー。
もう、ほんとこの子、女の子なの? そのハンサムな笑顔にくらっときたあたしは、頭を振って手を額に当てた。