異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 ああ、どうしよう。イクシア様に相談する? うん。もしあたしに何かできるのなら頑張りたい。それに彼なら……。



 お母様と魔道士の塔へと避難する最中、あたしはあーでもないこーでもないと考えながら歩いてた。

 でもね?

 あたしは待ってたのだ。彼が、ハクアが、この間のあたし達を襲った人達の取り調べを終えて詳細を話してくれるのを。

 あれだけの事があったんだもの。あたしにも知る権利があってもいいよね? そう思ってて。

 でも結局ひと月経ってもなんにも音沙汰もなし。

 聞きたかった異世界へ行く方法の事だって、ハクアの方から連絡くれてからって思って後回しにしてたのに。



 王宮はやっぱりバタバタと人が忙しそうにしてた。往来を行き来する人も多い。こんな夜なのにね。避難してくる人も多いし騎士団の人たちも出撃準備の為か忙しそうに動き回ってる。

「マリアンヌ!」

 そう声をかけてこちらに駆け寄ってきたのはクローディアだった。

「ああ、お姉さまも避難に?」

「ええ、わたくしは王子宮の方へ参ります。おじいさまがそちらに避難して居ますから」

 先代のジンバ・フーデンベルク様。今は跡目を嫡男のラルク様に継がせ御隠居なさってるんだったかな? 

 ラルク様のお姉さまがエリザベス前王妃、で、マクシミリアンのお母様。

 ラルク様の奥様がエリザベリート叔母様。お父様の妹で……。

 あーん、もう、ややこしい。

 つまりはここみーんななんだかんだと血が繋がってる。おまけにあたしのお母様は王様の妹でしょ?

 まあね、公爵家なんて王家のスペア。もともと血が濃いのはしょうがないのかもだけど、さ。

「あああ、心配です……。王がマクシミリアン様に竜退治の軍を率いよと仰ったとか。お父様も補佐としてゆきましたがそれでも……。心配で心配で……」

「お姉様。祈りましょう。皆が無事に帰るよう、立派に竜を退けてくれる事を」

「そうですわね………。わたくし達に出来ることは祈ることだけかもしれませんね……」

「わたくしは塔の聖女の間にゆきます。大聖女様を少しでもお助けし、皆の無事を祈りますわ」

「そうね。そうね。マリアンヌ。ごめんなさいね取り乱してしまって。少し心が落ち着きました。わたくしも王子宮からマクシミリアン様の無事を祈りますわ……」

 クローディアはそう優しく微笑むとぱたぱたとお付きの人たちの待つ所まで帰って行った。

 ああ、女の子って恋をすると変わるよね。

 あんなにイジワルだったお姉様があんなに優しく微笑むなんて。
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